「21世紀文化論」山口桂氏 特別講義

芸術学科科目「21世紀文化論」では、専任教員がさまざまな分野からゲストを招き、特別講義を実施しています。6月29日の小川敦生教授担当の回では、「クリスティーズ・ジャパン」代表取締役社長の山口桂氏による講義が行われました。

今回のタイトルは「オークションの世界とその舞台裏」。

1766年創業のクリスティーズは、美術品を最初に取り扱ったオークションハウスとして、ロンドン、ニューヨーク、香港を中心に、世界各地で年間約350回のオークションを開催しています。取り扱い分野は、美術品から宝石・ワインなどのラグジュアリー品まで、80種類以上にも及ぶそうです。

オークションは、身分に関わらず最高値で入札した人が購入できる、公平かつ透明性の高い商取引ですが、メディアでは有名なアート作品が高額で落札されるシーンを見ることが多いためか、何となく敷居が高いイメージを持ってしまいがちです。

しかし、山口氏の講義では、クリスティーズの事業内容をはじめ、出品作品にまつわるエピソードや、オークションの利用方法など、さまざまなお話を聞かせていただき、アートオークションへの解像度が高まりました。

また、日本のアート市場活性化に向けて、インバウンド誘致や税制の見直し、美術教育などの必要性についてもお話いただきました。

会場の学生たちからは、オークションハウスでの仕事に求められる能力や、クリスティーズと競合社との違い、現代美術の価値指標など、多くの質問が寄せられました。

質疑応答の中で、山口氏はコレクションする際の心構えについて、次のように述べられました。
「将来値上がりすることを考えるのではなく、自分が本当に好きな作品を買うことが良いと思います。そうやってできたコレクションは、結果として個性が現れ、魅力的なものになると思います。」

アートの作り手/研究者として制作/リサーチしている多摩美生にとって、ビジネスとしてアートに携わる山口氏の講義は、アートとの関わり方やこれからの市場の行方を考えるための重要な機会になったのではないかと思います。

今回の「21世紀文化論」は、アートとビジネスの両方を併せ持つオークションハウスについて理解を深めることができた、貴重な回となりました。